「認証」とは?② ―安心・安全な治療のための取り組み―
2026.10.2当院について
不妊治療において、患者様ご本人の確認や、卵子・精子・受精卵などの検体の確認といった「認証」は、安心・安全な治療のため、そして患者様の個人情報の保護やプライバシーへの配慮のために、近年ますます重要になっていると私たちは考えています。
前回のコラムでは、診察室に入る際に行っている「患者様認証」についてご紹介しました。第2回となる今回は、当院で行っている「検体認証」についてご紹介します。
治療の中でお預かりするさまざまな検体
当院では、治療の過程で、患者様からさまざまな種類の検体をお預かりしています。
たとえば、採血を行った場合には血液を、初診時の健康チェックや妊娠判定などでは尿をお預かりします。さらに、人工授精や体外受精を行う場合には、精液や卵子、受精卵などをお預かりすることになります。
また、受精卵などでは、同じ患者様から同じ種類の検体を複数同時にお預かりすることも少なくありません。
これからは「検体と検体」の認証も重要に
以前は、受精卵を1つずつ個別に培養・管理することは容易ではありませんでした。しかし現在では、タイムラプス培養器(受精卵の成長を培養器から出さずに連続して撮影・観察できる装置)などの新しい技術の導入により、受精卵を1つずつ個別に管理しやすくなっています。
さらに、受精卵の染色体の数を調べるPGT-A(着床前胚染色体異数性検査)の普及などにより、受精卵1つひとつについて得られる情報も多くなっています。
そのため、これまでは「人と検体」の認証が重視されてきましたが、近年は同じ患者様の受精卵どうしを区別する「検体と検体」の認証も重要になってきていると、私たちは考えています。
ダブルチェックだけでは防ぎきれないこと
検体の取り違えは、絶対にあってはならないことです。
取り違えを防ぐために、これまで一般的に行われてきたのが、ダブルチェックという方法です。スタッフ2人で、患者番号や識別番号を声に出して読み上げるなどして、互いに確認し合う方法です。
ダブルチェックは手軽に行える一方で、人の目と耳に頼る確認であるため、検体の取り違えを防ぐ方法としては限界もあると指摘されています[1]。
当院独自の検体認証システム
そこで当院では、独自の検体認証システムを導入し、すべての検体容器にバーコードラベルを貼付しています。容器を扱うたびに、スタッフが専用の端末でバーコードを読み取り、照合を行っています。

培養室での検体認証の様子。容器のバーコードを端末で読み取ります。
すべての検体容器は、患者様がお持ちのバーコード、そしてカルテと照合して認証を行います。たとえば採卵の際には、バーコード付きのリストバンドを着けていただき、ご本人と検体容器、カルテが一致していることを確認しています。

採卵時のリストバンドによる認証。照合の結果がその場で画面に表示されます。
また、検体をある容器から別の容器に移す際には、必ず移す前と移した後の両方の容器のバーコードを読み取り、一致していることを確認しています。人工授精、採卵、体外受精、顕微授精など、治療の工程ごとに、どの容器どうしを照合するかをあらかじめ定めて運用しています。

検体認証システムのメニュー画面。治療の工程ごとに照合する項目が設定されています。
さらに、体外受精の治療で取り扱う卵子・精子・受精卵については、特に安全を期して、スタッフによるダブルチェックと、バーコードによる検体認証とを併用する体制をとっています[2]。
前回ご紹介した患者様認証と、今回ご紹介した検体認証。この2つの仕組みにより、当クリニックでは、患者様の大切な検体を、お預かりしてから治療に用いるまで確実に管理しています。これからも、患者様に安心して通っていただけるクリニックであり続けられるよう、取り組みを続けてまいります。
参考文献
[1]Rienzi L, et al. Failure mode and effects analysis of witnessing protocols for ensuring traceability during IVF. Reprod Biomed Online. 2015;31(4):516-522.
[2]Practice Committee of the American Society for Reproductive Medicine, et al. Witnessing and protocol deviations in the in vitro fertilization and andrology laboratory: a committee opinion. Fertil Steril. 2026;126:38-48.
執筆・監修
オガタファミリークリニック 院長 緒方 誠司
- 医学博士(大阪大学)
- 日本産科婦人科学会専門医
- 日本生殖医学会認定生殖医療専門医
- 日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医
- 母体保護法指定医